テレビみたいなテロップデザインの基本

「ここにテロップを入れてください」

と、一般的な言葉になったテロップ。編集で挿入する文字情報のことです。

テレビのバラエティ番組で演出を加えるために最近では数多くのテロップが挿入されています。

テロップの意味

本来なら映像だけで全てを表現するのですが、どうしても伝えきれない情報や、ストーリーの背景や演者の名前、発言した内容などなどをいろんなフォントでいろんなデザイン、アニメーションで表現したもの。それがテロップになります。

ナイトスクープが最初に入れた?

ナイトスクープが最初にテロップを入れたと聞いたことがあります。でも調べてみるとNHKが普通にもっと前からやっていました。さすがのNHK。

実は、映像に字を入れることは昔からあったのです。本題に入る前に少しばかりテロップ技術の歴史をたどってみましょう。

テロップ技術の歴史

文字テロップが 1964 年以前には手 書きであり,東京オリンピックを機に写植化され,1988 年から文字発生装置による制作となったことであった。

引用:NHK バラエティ番組に見る文字テロップの変遷 ―テレビにおける表記実態と機能の分化―設 樂 馨 (武庫川女子大学文学部日本語日本文学科)

とあるように最初は、撮影セットの中にある小道具に文字を書いてカメラで撮影したり、テロップカードと呼ばれる黒いカードに白で書かれた文字をカメラで写して、透過させていたり・・・。しかも手書きで。

文字発生装置たるものができてやっと、フォントを機械的に使用するようになったのです。

しかも現在のような、デザインのあるテロップの挿入をするようになったのは2000年代になってからで、やたらとテロップの数が増えたのもこの10年といったところでしょうか。

参考:NHK バラエティ番組に見る文字テロップの変遷―テレビにおける表記実態と機能の分化―設 樂 馨 (武庫川女子大学文学部日本語日本文学科)

ながら視聴が増えたこと、スマホ利用の増加によって離脱率が増えたことなどにより途中から見た人が瞬時に内容が理解できるようにテロップはさらに多くなりつつ有ります。

受注時に要確認 テロップは作業時間が数倍に

テレビをみていると意図も簡単にテロップを入れていますが、テレビでは分業制なのでディレクター・ADがテロップ原稿を起こし、テロッパーと言われる専門家が人がテロップを校正、デザイン、そして編集エンジニアがテロップデータを映像に当て込みます。(←録画物の場合)

そして、テレビ局には以前にもお伝えしたリニア方式なのでテロップ作成・挿入の専用ハードとソフトがあります。Adobeはほぼほぼ使っていません。

逆に我々、街の映像屋さんはノンリニア方式でPCで、しかも一人で作業。テロップ原稿を考え、デザインして、編集します。なのでテロップありありの案件だとぞっとするくらい時間がかかるんですね。

なので、特に企業案件なんかは受注時にテロップを入れるのかどうかを必ず確認します。テロップ有りと無しではかかる日数が数倍違いますので。

WEBではテロップが必須な時代

テレビのお話が続いているので、WEBの方も。WEBで展開する映像ではテロップは必須です。

というのも今日ではWEBでもモバイルでの閲覧が中心。スマホをどこで見ているかを考えるとわかるのですが、電車の中、街中、自宅、仕事場など自宅を除きあまり音を大きく出せないような空間で閲覧していることがほとんどです。

イヤホンを必ずつけてという人は少ないと思います。音声無しでも内容が理解できなくてはなりません。

ですので、WEB映像の場合はほぼテロップ有りと考えてください。インタビューなどなら音声を全部拾う「テロップ全部載せ」も有ります。

見やすいテロップとは

それでは本題に入ります。

文字を入れる際、映像にはWEBデザインや紙のデザインには無いある事情が有ります。

それは文字の後ろの背景が動いていること。(WEBでもそういった場合も有りますが)

背景が映像であることはどういうことかというと、様々な色がテロップの背景に現れるのです。それは文字のちらつきを産んだり白の文字に白の背景が来ることもあれば黒の背景に黒が来ることもあるわけです。

テロップが背景に同化して見にくい状態

また、映像が再生されるにつれてテロップも次から次へと内容が変わっていくため数秒で瞬時に内容を伝えるテロップでなければなりません。

ですので、見やすくしっかりとした文字の輪郭を表現することがテロップの役割となります。

文字の色や輪郭は明度差を意識する

見やすいテロップの簡単な方法は

文字の色と背景に「明度差」があることが重要になります。

↓まずは単純に明度差だけを考えた場合

テロップ背景と明度差をつける

さらに強調したい場合、エッジ(縁)を入れるのですがそこにも明度差が関係してきます。

エッジの明度差も注意

文字色とエッジ色に明度差をつける

見たらすぐわかることですが、こういった基本も押さえておきましょう。

さらにエッジをつける際の基本はエッジの太さは隣の文字と繋がるくらいを意識してください。というのも細いと映像の場合ちらつきが発生するためです。

太さは隣の文字に重なるくらいがベスト

フォントの選び方

ここまででお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、テロップは太いフォントがベターなのです。

あくまで視認性を考えた場合ですが、細いフォントだとどうしても見にくくなるのと、エッジを入れた場合にエッジに文字が負けてしまい見にくさとダサさが出てしまうのです。

太めのフォントを使う フォント:新ゴpro

ちなみに太めのフォントはあまり有りません。

テレビやデザインでもよく使われるモリサワフォントがあれば一番いいのですが、一括購入は結構高いです。

最近はadobeのフォントシリーズTypekitが充実してきたのでそちらを使うのもアリですし、フォント一種類から購入もできるようになってきているので、こまめに購入するのも一つです。

また、文字詰めなどの文字間隔のバランスもとったりすることでクオリティーはさらに上がります。

カーニングなどの文字バランスが綺麗なデザインに見せる決め手

少し手を加えるだけでテロップはデザイン性が高まります。

テロップを作ったら必ずカーニングを施しましょう。それだけで変わります!

文字ツールのカーニングを「自動」にするだけです。

カーニングやトラッキング、行送り、ベースラインシフトもよく使います。

何かバランスが悪い。それはカーニングだったりします。

文字バランスはデザインの基本中の基本ですが、結構できてない人も多いです。

テレビ番組のテロップでもこの辺はシビアに調整しています。

CMやPVならなおさらです。キャッチコピーなんかならアウトラインにして一文字づつ位置調整したりもします。

視認性かデザイン性か

話は戻って、明暗差のお話。

ここまではっきりと明暗差を出し、太めのテロップが良いというお話をしてきましたが、

実は・・・見えづらくて、細くてもいいんですね。

要は視認性を高めた方が良いテロップなのか、あくまでデザイン性に特化した方が良いテロップなのかは制作案件によってバラバラです。

私は勝手に「バラエティテロップ」「おしゃれテロップ」と名付けています。

バラエテイテロップ・・・とにかく見やすい、強調する、シーンを表現するかのごとくデザインする。番組やインフォマーシャルなど
おしゃれテロップ・・・映像の空間を邪魔せず溶け込んでいる。且つ読みやすい。読めなくても良いあくまでフォロー的な立ち位置。視認性よりもデザイン性を重視。CM、PVなど
実際の制作事例からまとめて見ました。こんなイメージです。
どちらかというとおしゃれテロップの方が最近は多いです。
デジタル化で大画面のテレビやカメラの画質も上がり細いフォントでも十分大丈夫になったのと、デザインの流行りが現状はシンプル指向で、エッジを入れたりするよりも軽くシャドウを当てるだけのテロップを多用しています。

まとめ 結局はセンス。勉強はテレビを見れば良いだけ。

今回はテロップデザインの基本的な考え方をお伝えしました。

このほかにも配置、大きさなども重要なセンテンスになります。

ちょっとした企業PVで素晴らしい撮影をしたのに、テロップを入れたらなんかダサくなっちゃった。ってことは結構有ります。

だいたいダサくなる原因は、以下の通り。

  • PCに元々あるフォントを使っている。
  • 演出にあっていないフォントデザイン(おしゃれ映像にバラエティテロップを打ち込んでいる)
  • 3行4行と文字数が多い。
  • 配置(レイアウト)がおかしい。

センスを磨きましょう。テロップセンスを磨くにはテレビを見るのが一番。番組とCMを見ましょう。

番組はバラエティテロップ。CMはおしゃれテロップとして参考にしてください。

そのほかにも街の看板や広告をデザイナー視点で見てください。「自分だったらどうするか」「これは自分には思いつかない」などなど。特に大手の広告はプロ中のプロの猛者クリエイターが作っています。「あえてバランスを崩したデザイン」や「最初にどこに目を行かせるか」などなど最高に勉強になります。

少し視点を変えて、考えながらテレビや看板を見ているだけでセンスは上がって行きますので。

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